建設工事における安全衛生経費の適切な支払いに向けて

「人材」で成り立つ建設業において、建設工事従事者の安全及び健康の確保は、建設工事の大前提であり、議員立法「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(通称:建設職人基本法)」が制定されたことからも分かるように業界にとって最優先事項です。全国仮設安全事業協同組合(ACCESS)では、この認識のもと、建設工事における安全衛生経費の適切な支払いに向けた取組を推進しています。

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労働災害防止対策を適切に実施するために必要な安全衛生経費が下請負人まで適切に支払われるためには、すべての建設企業において「安全衛生対策項目の確認表」及び、安全衛生経費を内訳明示した「標準見積書」の作成・活用が求められます。下請負人が元請企業や直近上位の注文者に対して提出する見積書について、安全衛生経費を内訳明示することによって、適正な支払いにつなげていただく必要があります。

「安全衛生経費なくして建設職人の未来なし」
ACCESSではこの合言葉を掲げ、安全衛生経費の確実な確保を推進しております。適正な取引環境の構築に向けて、本ページでご提供する「確認表」や「標準見積書」をぜひ積極的にご活用ください。

関係法令における「安全衛生経費」の規定と法制化への歩み

2017年に施行された建設職人基本法及び、これに基づく政府の「基本計画」において、安全衛生経費について以下のとおり定められています。

建設職人基本法第10条(経費の適切かつ明確な積算等)

建設職人基本法第10条では、建設工事の請負契約における安全衛生経費の積算、明示及び支払いの促進について明確に規定されています。

建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)
(建設工事の請負契約における経費の適切かつ明確な積算等)
第十条 国及び都道府県は、建設工事の請負契約において建設工事従事者の安全及び健康に十分配慮された請負代金の額、工期等が定められ、これが確実に履行されるよう、建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する経費(建設工事従事者に係る労働者災害補償保険の保険料を含む。)の適切かつ明確な積算、明示及び支払の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

基本計画における安全衛生経費の適切な支払いの推進

上記の法規定に基づき策定された変更計画(2023年6月閣議決定)において、建設工事の請負契約の締結に際し、安全衛生経費が不当に低く見積もられることのないよう、以下の対策が明記されています。

  • 経費の明示: 見積書に安全衛生経費の内訳を明示し、元請負人と下請負人が適切に協議すること。
  • 適切な支払いの確保: 下請負人が安全対策を適切に実施できるよう、必要な経費を元請負人が適正に支払うこと。
  • 標準見積書の活用: 経費を明確化するための標準見積書の普及と活用の促進を図ること。

改正建設業法等による見積書への内訳明示ルール

2025年12月12日に施行された改正建設業法により、請負契約の締結に際し、適正な施工を確保するために不可欠な経費を内訳明示した見積書(材料費等記載見積書)の作成が努力義務化されました(法第20条第1項)。
また、改正施行規則第13条の12では、この「適正な施工を確保するために不可欠な経費」として、以下の3項目が定義されています。

  • 法定福利費(建設工事に従事する者の健康保険料等の事業主負担額をいう。)
  • 安全衛生経費(建設職人基本法第10条に規定する建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する経費をいう。)
  • 建設業退職金共済契約に係る掛金

これにより、従来「諸経費」等に含まれることがあった安全衛生経費を、明確に区分して計上し、注文者に提示することが求められます。なお、適正に見積もられたこれらの経費に対し、注文者が「通常必要と認められる額」を著しく下回る変更を依頼すること、及びその金額で契約を締結することは禁止されています(法第19条の3第20条)。

安全衛生経費の具体的な積算方法(足場工事)

改正法の施行に伴う通知において、安全衛生経費の積算には以下のいずれかの方法が示されています。

  • 個別積み上げ方式: 現場ごとに必要となる対策項目(開口部養生等)を個別に積み上げる方法。
  • 経費率計上方式: 自社の施工データに基づき、一定の割合で算出する方法。

ACCESS推奨の算定基準

ACCESSでは、国土交通省に対し、個別工事ごとのデータ収集を簡略化した「組合員共通の経費率」を適用する積算方法を提出し、同省から承諾を得ました。具体的には、2025年現在の推奨経費率である10.23%を基本とし、そこに個別工事の特性に応じた「個別積み上げ方式」を加味して算定する方法を推奨しております。

足場工事用の確認表および標準見積書のダウンロード

国土交通省は建設工事における安全衛生経費の適切な支払いのための実効性ある施策として、安全衛生対策の認識の齟齬の解消や安全衛生意識の共有を図るための「安全衛生対策項目の確認表」と、安全衛生経費を内訳として明示するための「標準見積書」の作成・普及を促進しています。これを受け、全国仮設安全事業協同組合(ACCESS)は「足場」工事における確認表及び標準見積書を作成しました。

安全衛生対策項目の確認表(足場)

見積りや契約の前に、現場で必要となる安全対策項目(朝顔、親綱、幅木、メッシュシート等)を、元請負人と下請負人間で事前に確認・共有するためのチェックリストです。

安全衛生経費を内訳として明示するための「標準見積書」(足場)

上記の確認表に基づき、安全衛生経費を他経費と混合した「一式」ではなく、内訳として明示するための足場工事用標準見積書で、国土交通省に提出、承諾済みです。

国土交通省関連サイト

国土交通省により公開されている、安全衛生経費及び労務費に関する指針・支援ツールです。適正な価格交渉や見積り作成の根拠資料としてご活用ください。

建設工事における安全衛生経費の適切な支払いに向けて

安全衛生経費の適切な支払いに向けた詳細なガイドラインや実施マニュアル、周知用リーフレット等が掲載されている特設サイトです。当ページで掲載している足場工事用以外のフォーマット(鉄骨工事、解体工事等)についても、こちらからご確認いただけます。

労務費に関する基準ポータルサイト

改正建設業法の円滑な施行を支援するため、職種別の「労務費の基準値」や見積り支援ツール等が提供されています。適切な労務費の確保に向けた各種情報が網羅されています。

関連サイト
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